排卵後の人工授精は意味があるの?(当院の成績)

人工授精当日に排卵をしている場合、患者様が排卵をしていて妊娠しないのではないかと不安に感じている姿をよく外来で見かけますし、ネットを見ていても「排卵後なのに人工授精をされた」などの口コミも多く見られます。ここが白黒つかない理由は論文が中々ないからです。海外は複数卵胞を育てることが多く、何個排卵していれば排卵後と定義するのかも難しいと思います。ですので、海外の論文はほとんど排卵をさせるトリガー(HCG投与)からの時間で議論しています。ほとんどの論文はHCG投与後0-36時間が好ましいとしており、中にはHCG投与後48時間が好ましいという論文も見られます。 HCG投与をすると通常40時間ほどで排卵するので48時間というのは排卵後を指しているのではないかと思うのですが、複数卵胞の発育があるため議論をしていないのではないでしょうか。体外受精治療を行っていると人によって受精卵の育ち方にもスピード差がありますし、子宮側の準備(着床の窓)も早め、遅めに整う人がいることも経験しますので、人工授精に同じ人でも結果が出なければいろいろなパターンを試したらいいと思うのですが、人工授精の妊娠率はたかだか10%弱なので90%は妊娠しません。そんな中、妊娠判定を待つ患者様の立場になれば、何をどういう意図でされているかは医療者側も責任をもつ義務があるのだと日々感じています。

今回、適切な論文を紹介することができないので当院の成績を示しいたします。 当院は卵胞サイズが15mm以上になってから人工授精日を決定します。HCG投与は90%の症例に行なっています。HCG投与後 0-24時間に人工授精を行うことがほとんどです。 人工授精当日の排卵の有無による成績は以下の通りです。この管理であれば人工授精当日の排卵後であっても妊娠成績が落ちていないことがわかっていただけるかと思います。2017年にも一度成績を出しましたが同様の結果でした。今までの月経周期のパターンや事前の管理をしっかり行えば排卵後でも成績は低下しないと思っておりますので、あまり心配なさらないでくださいね。今後事前にHCG投与を増やしていっても問題ないと思っている根拠です。ご理解いただければと思っています。

 
排卵後
排卵前
≧18mm
<18mm
平均年齢
35.6
35
35
症例数
870
2232
442
妊娠数
66
157
20
妊娠率
7.60%
7.00%
4.50%

 

文責:川井(院長)