不妊症に対する子宮内膜ポリープ切除術の有効性について

当院で毎週火曜日に外来を担当していただいています東京医科歯科大学 周産・女性診療科 助教 平光史朗先生にブログの記事を書いていただきました。不妊治療を行っていると子宮内膜ポリープがある患者様が数多くいらっしゃいます。平光先生が、手術介入することにより妊娠率上がるのかどうかを日本受精着床学会誌に投稿された論文の要点をブログでまとめてくださいました。


今回は子宮内膜ポリープについてお話したいと思います。子宮内膜ポリープは、子宮内膜が限局的に増殖隆起したものであり、その発生には女性ホルモン(エストロゲン)が関与します。生殖年齢の約10%に認めるといわれますが、不妊症の方には30%程度みられるとの報告があり、子宮内膜ポリープが不妊の原因である可能性が考えられます。エコーなどで疑いがある場合は子宮の中を、カメラ(子宮鏡)を用いて観察し、診断します。
治療としては子宮鏡を使用した子宮鏡下子宮内膜ポリープ切除術が標準治療です。今回、亀田IVFクリニック幕張と東京医科歯科大学で経験した子宮内膜ポリープについて検討を行いましたので、ご報告したいと思います。
子宮内膜ポリープと診断され、東京医科歯科大学で治療(子宮鏡下内膜ポリープ切除術)をうけた36例を検討しました。子宮内膜ポリープ切除した方の術後の妊娠率は44.4%と一定の治療効果を認めました。子宮内膜ポリープの大きさが1.5-2.0cmでは影響を与えないという報告もありましたが、今回我々が経験した36例中34例が1.5㎝以下で、大きさにかかわらず、小さくても治療した方がよいと考えられます。一般にポリープは1個だけできる単発性が多いのですが、不妊症患者では2個以上の多発性が多いとされます。単発性ポリープ群と多発性ポリープ群を比較すると、それぞれ治療後の妊娠率は25.0%と54.2%でした。このことから、多発性ポリープがあった場合は不妊症の原因としてより重要であり、治療が望ましいと考えられます。子宮内の発生部位での妊娠成績を比較しましたが、今回の検討では特に発生した部位による違いは認めませんでした。また子宮内膜ポリープを切除した全ての病理検査ではいずれも良性であり、悪性の所見は認めませんでした。子宮鏡下手術は開腹手術や腹腔鏡手術に比べ、安全で、侵襲が少ない手術であり、今回の検討でも手術による合併症はありませんでした。ただ、通常は腰椎麻酔で行うため、入院治療が必要になります。当院では入院施設がないため、子宮内膜ポリープ手術は、東京医科歯科大学や亀田総合病院に紹介させていただくことが多いです。  

不妊症に対する子宮鏡下内膜ポリープ切除術の有用性
平光史朗1, 石川智則2, 辰巳嵩征2, 齊藤和毅2, 中筋貴史1, 岩原由樹1, 川井清考3, 宮坂尚幸1
1東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 生殖機能協関学, 2東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科 茨城県小児・周産期地域医療学, 3亀田IVFクリニック幕張 生殖医療科
日本受精着床学会雑誌 37(1): 7-11, 2020.

文責:川井(院長)