男性のアルコール消費と妊娠のしやすさとの関連性

どの程度のアルコール摂取が男性の妊娠しやすさに影響を及ぼすかを調査したデンマークの研究班からの前向きコホート研究の結果をご紹介します。デンマークの662カップル、北アメリカの2017カップルからアンケート形式で行われています。最長12ヶ月間、隔月のアンケートで実施し、不妊原因があるカップル、治療を始めたカップルは除かれています。
飲酒のアルコールの種類別の1単位は以下の通りで計算しています。

  • ビール:330mL(缶ビール1本)
  • ワイン:120mL(グラス1杯)
  • デザートワイン:50mL
  • 蒸留酒:20mL(ウィスキーのシングルで30mlですので少なめです。)

12周期の累積の妊娠率は64.5%(1727組)でした。アルコールの週あたりの消費量の中央値はそれぞれデンマーク集団4.5単位:(2.0-7.8)、北アメリカ集団:4.1単位(1.0-8.6)でした。アルコールを飲まない集団に比べて妊娠に影響を及ぼす他の要因を統計的に調整し、全く飲酒しない男性の妊娠しやすさを1とした場合、飲酒量別の妊娠しやすさは、以下の通りでした。

  デンマーク+北アメリカ デンマーク 北アメリカ
週1-5単位 1.02
(95%CI 0.90-1.17)
0.97
(95%CI 0.73-1.28)
1.02
(95%CI 0.88-1.18)
週6-13単位 1.10
(95%CI 0.96-1.27)
0.81
(95%CI 0.60-1.10)
1.20
(95%CI 1.03-1.40)
週14単位以上 0.98
(95%CI 0.81-1.18)
0.82
(95%CI 0.60-1.10)
1.03
(95%CI 0.84-1.26)
妊娠のしやすさ 影響なし 影響なし 影響なし

男性の飲酒と妊娠しやすさの関係は、ほとんどなさそうという結果となりました。ただし、14単位以上のカップル数は少なく、この数が増えた場合はなんとも言えないところではあります。Høyer Sら、Hum Reprod. 2020: doi: 10.1093/humrep/dez294.
≪私見≫
新型コロナウィルスの影響でStay Homeが長引くと、どうしても家でのアルコール量が増えてしまう気がします。不妊に悩むカップルの中にもこのことを不安に思っている方がいるだろうなと思いご紹介させていただきました。
この論文をお伝えするのに少しためらったのは、不妊原因があるカップル、治療を始めたカップルではないカップルに限った話だからです。そこはご了承ください。不妊原因があるとアルコールの影響がちゃんと評価できず埋れてしまう可能性もあるので、検証する上では必要な研究だと感じています。年齢は若め(平均男性年齢 31歳、女性年齢 29歳)ですが、BMI 26.0(中肉中背でしょうか)、喫煙率(6.8%)は低く、カフェイン摂取(>150mg/日)も半数以上の人であります。ただ、不妊に影響すると思われる因子は統計的に補正されています。
男性のアルコール摂取量が妊娠には影響しないとした論文ですが、女性に関しても同じデンマーク集団で週14単位までは妊娠率に影響を与えないという2016年に論文が出ています。精子に関して多くの文献は、ある程度のアルコールやカフェインであれば、精液所見や体外受精に成績に影響しないとしているものが多くみられます。今回の論文もそうですが、「アルコールは適量であれば問題なし」という内容は踏襲されていますので、不妊治療を始めた際に、夫婦のアルコール摂取をお互いに攻め合うことを避けるのは、家庭に円満につながるのではないかと思っています。そうはいっても、当院の男性不妊外来のデータでは夫に規則正しい生活習慣を身につけていただくと精液所見が改善しているケースが多く見られていますので、なんでも適度が良いのだと思います。
ただし、妊娠中の女性のアルコール摂取は、流産、死産、先天異常が生じアルコールが催奇形性を有することは明らかでありますので、アルコールが安全であると言っているわけではないこともご理解ください。

アルコール、ライフスタイルの妊娠への影響は、当院の妊活セミナー「今日からできる妊活のすゝめ」でも、お話ししています。随時、Web配信をしておりますのでお気軽にご参加ください。
http://www.kameda-ivf.jp/ja/info/news/detail/515.html

文責:川井(院長)