当院での多胎率

不妊治療を行なっていると、患者様から次のような質問をいただくことがあります。
A:「なぜ排卵があるのに薬を使うのですか。」
B:「新型コロナウィルスで通院はできないけど自分たちでタイミングを取りたいからクロミッドだけ処方してもらうことはできますか?」

私は次のようにお返事しています。

A:「①排卵までの期間が長い排卵障害のかた②排卵が起きないかた③原因不明の不妊症のかたに使用します。」
B:「エコーなどでモニターができない状況では多胎のリスクがあるので処方は難しいです。」2020年に排卵障害での薬の使い方と原因不明不妊へのタイミング・人工授精の行い方についてアメリカ生殖医学会からガイドラインのような声明が二つ更新さました。このガイドラインの中ではポイントは二つあり、①妊娠率(治療効率)を上げること ②合併症(多胎など)を下げることです。
当院の累積での妊娠率ですが、タイミングでは18.0の方が妊娠卒業、人工授精では16.0%の方が妊娠卒業としていますが、基本は複数排卵させて治療は行っておりません。妊娠率を上げる方法は不妊原因の治療とタイミング→人工授精→体外受精というステップアップがメインです。したがって、タイミング・人工授精の間に排卵数を多くして妊娠率を上げたいというのは間違いです。多胎は母児共に周産期合併症や新生児合併症のリスクが増えるため避けることが望ましいとされており、この考え方は世界共通です。
ただし、排卵障害で卵巣刺激を行い、残念ながら複数排卵が起こってしまって治療経過からタイミングをとってしまったなどで多胎となる可能性もゼロではありません。私たちは3つ以上の排卵の場合はタイミングを取ることを許可しておりませんが、今までに2個排卵でも双胎となった患者様がおりますので当院での双胎率をご報告させていただきます。
今回のデータは亀田IVFクリニック幕張開設後2020年3月までに妊娠卒業されて1000名近い患者様のデータを元に算出しています。タイミング治療での多胎率は1.3%です。その中の半数がクロミッドを使った2 個排卵での2卵性の双子で、残りの半数は1個排卵での双子です。人工授精での多胎率は1.4%です。全例クロミッドを使った症例でした。数例の症例ではありますが、全症例が当院での治療開始後3周期以内での治療での多胎でした。
当院治療での多胎率は高くないとは思いますが、やはり避け得る多胎が生じていることも事実です。今後も患者様により良い治療選択をしていただけるよう取り組んでいきたいと思います。
ちなみに体外受精の双胎率は2.9%(2卵性が2%、1卵性が1%)でした。

文責:川井(院長)