顕微授精について③

今回は「顕微授精について」の3回目になります。
1回目の「顕微授精について」で、顕微授精は卵子の中に1つの精子を入れて受精を促す技術でICSI(イクシー)とも呼ばれていること、そして、顕微授精による赤ちゃんの誕生が初めて報告された1992年以降、従来から用いられているICSI技術である従来法についてお話しました。2回目の「顕微授精について②」ではピエゾ法についてお話しました。今回は従来法とピエゾ法の比較について、論文紹介も含めてお話します。

現在までのところ、不妊治療において従来法とピエゾ法を比較した論文は全部で4本発表されています。発表者は全員日本人です。

  1. The usefulness of a piezo-micromanipulator in intracytoplasmic sperm injection in humans. Yanagida K et al. Hum Reprod. 1999 Feb;14(2):448-53.
  2. Comparison of piezo-assisted micromanipulation with conventional micromanipulation for intracytoplasmic sperm injection into human oocytes. Takeuchi S et al. Gynecol Obstet Invest. 2001;52(3):158-62.
  3. Clinical efficiency of Piezo-ICSI using micropipettes with a wall thickness of 0.625 μm. Hiraoka K and Kitamura S. J Assist Reprod Genet. 2015;32(12):1827-33.
  4. Piezo-assisted ICSI improves fertilization and blastocyst development rates compared with conventional ICSI in women aged more than 35 years. Furuhashi K et al. Reprod Med Biol. 2019;18(4):357-361.

それぞれの論文の受精率を抜粋すると、

  1. 従来法 vs ピエゾ法=66% vs 79%
  2. 従来法 vs ピエゾ法=83% vs 90%
  3. 従来法 vs ピエゾ法=68% vs 89%
  4. 従来法 vs ピエゾ法=70% vs 75%

と全ての報告において、ピエゾ法の受精率の方が従来法に比べて高いことが報告されています。

また、我々が以前に報告したICSI未経験者が、どれ位の期間で指導者と同等の受精率が出るのかを検討した論文があります。

Piezo-ICSIがICSI未経験者エンブリオロジストのICSI後の臨床成績に及ぼす影響. 伊林他. 日本臨床エンブリオロジスト学会雑誌. 2018;20(1):1-8.

エンブリオロジストは胚培養士のことです。この論文でピエゾ法はICSI未経験者であっても30工程のトレーニングを行うことにより、指導者と同等の受精率を出せる技術であることを報告しています。

報告されている受精率は以下の通りです。
・ICSI未経験者が臨床でピエゾ法を行った始めの100個の受精率:87%
・指導者が同一施設でピエゾ法を行った始めの100個の受精率:91%

以上のことから、過去に報告された全ての論文においてピエゾ法は従来法に比べて受精率が高いこと、また、ICSI未経験者であっても直ぐに指導者と同等の成績を出せるという理由から、現在、当クリニックで実施される顕微授精は全例、このピエゾ法で行われています。

文責:平岡(培養室長)