顕微授精について①

今回は顕微授精のお話をさせて頂きます。
顕微授精は卵子の中に1つの精子を入れて受精を促す技術です。顕微授精は英語でIntra-Cytoplasmic Sperm Injection、それぞれの単語の頭文字を取ってICSI(イクシー)とも呼ばれています。

ヒト卵子を身近なものに例えると、イクラの卵のようであり、その卵子の周りはゼリー状の殻により全面が覆われています。このゼリー状の殻は、半透明で殻の中の卵子は透けて見えるので、透明帯と言われています。

顕微授精では卵子の膜に小さな穴を開けて、そこから精子を卵子の中に注入します。この顕微授精、ヒトの世界では1992年に初めて顕微授精による赤ちゃんの出産が報告され、既に28年の歴史があります。

その当時に用いられた顕微授精技術が現在も主に行われています。精子の注入には、先が尖った細いガラス製の針が用いられます(図①)。卵子そのものに針を刺すためには、先ず、卵子の周りを覆っているゼリー状の殻(透明帯)を貫通させる必要があります。針先の尖りを利用して透明帯を貫通させます。この際、卵子は若干押しつぶされて変形します(図②)。無事、透明帯を貫通したら(図③)、次は、この針を卵子に突き刺して膜を破るのですが、卵子の膜は弾力性があり、いくら先が尖った針を突き刺しても、卵子にめり込むだけで穴は空きません(図③)。風船に指を突き刺しても風船は割れずに指がめり込むだけと言ったイメージでしょうか。めり込んだ状態で精子を出したところで、穴は空いていないので、精子は卵子の中に入れず卵子の外に押し返されてしまいます。そこで、卵子の膜に穴を開けるために、卵子にめり込ませた針の中に卵子の膜を吸引して引き伸ばして(図④)、引きちぎる必要があります(図⑤)。ピーンと張ったレジ袋に超強力な掃除機のホースを当てて、掃除機のホースの中にレジ袋を吸い込んでレジ袋を引きちぎって穴を空けると言ったイメージでしょうか。卵子の膜に穴が空いたことを確認したら(図⑤)、精子を卵子の中に注入します(図⑥)。

現在、日本以外の世界中で主にこの方法が用いられています。この方法は1992年以降、従来から用いられている技術なので従来法とも呼ばれます。1995年は、この従来法とは異なるアプローチで卵子の膜に穴を空ける顕微授精技術が登場します。次回はこの顕微授精技術についてお話したいと思います。

文責:平岡(培養室長)