採卵時成熟判定

今回は採卵時成熟判定のお話をさせて頂きます。
採卵直後の卵子は粒々の細胞である卵丘細胞に卵子全体を何層にも渡ってびっしりと覆われています。卵子が成熟しているのか?否か?を知ろうと思うと、この卵丘細胞を完全に取り除かなければ卵子本体の成熟度を知ることが出来ません。

卵丘細胞に覆われたまま卵子の成熟度を「直接的に」知る方法はありますが、熟練した技術を必要とし、正しい操作が出来ていない場合、卵子にダメージを与えることになります。

卵丘細胞に覆われたまま卵子の成熟度を「間接的に」知る方法として長年用いられているのは卵丘細胞の形態から成熟度を「予測」するものです。卵子が未熟な間は卵丘細胞も小さく、卵子が成熟するにつれて卵丘細胞は増殖・膨化して大きくなり、卵子が成熟してから時間が経過して過熟気味になると、卵丘細胞にアポトーシス(細胞のプログラムされた細胞死)が起きて卵丘細胞の凝縮・断片化が起きて結合が解れて小さくなり、また、黒くなります。

採卵時の卵子の成熟度判定は重要です。卵子の成熟度により適切な受精方法の選択、あるいは、卵子の処理方法等を修正する必要があり、また、採卵の時期が適切であったかどうか等の判断にも活かされます。

この卵丘細胞の状態から卵子の成熟度判定を行う方法ですが、以前は卵丘細胞の拡がり大・中・小によりグレード①・②・③の3パターンに分類していたものの、実質、成熟している(グレード①、②:MII)か、未熟(グレード③:MI or GV)かの2パターンのみの成熟度判定でした。この判定方法を開院当初から使用しておりましたが、採卵時に判定した成熟度と実際の成熟度の間にズレが度々あり、成績の振り返りを行うと、このズレにより適切な受精方法の選択、あるいは、適切な卵子の処理を出来ていなかった可能性があることが分かりました。

そこで我々は採卵時成熟判定を更に細かく行うことにしました。以前の方法では卵丘細胞の拡がり大・中・小により判定していましたが、新しい方法では卵丘細胞の拡がりではなく、卵子を取り囲む直ぐ外側の細胞である放射冠の形態により細かく5パターンに分類します。未熟と判定した場合でも1段階前の未熟(MI)なのか2段階前の未熟(GV)なのか、成熟(MII)なのか、成熟してから時間が経過した状態(MII+)なのか。この判定方法に変更してからは卵子の成熟度をより細かく判定・予測することで、医師との卵子の詳細な情報の共有が出来、また、適切な受精方法の選択および卵子の処理が行えるようになり、間接的に受精成績の改善に結びついていると感じることが多くなりました。今後は成熟度判定の精度を上げて、更に受精成績の改善を目指したいと思います。

文責:平岡(培養室長)