トリガー別での正常胚の割合(論文紹介)

当院では患者さまの卵巣予備能と刺激の種類によってトリガーを切り替えています。トリガーとは採卵を行う34-37時間前に卵の成熟を促すために使用する薬剤です。日本ではGnRHa(点鼻薬:スプレキュア、ブセレキュア)、hCG(尿由来のuhCG、リコンビナント製剤のrhCG(オビドレル))が使用されることが大半です。GnRHaは下垂体に内因性のLH、FSHを産生させるよう誘導するため、LH受容体にhCGがくっつきLHのように作用するより生理的です。しかし GnRHa 効果は一瞬のため適切なタイミングで使用しないと回収卵・成熟卵数が低下したり、新鮮胚移植を行う場合の黄体機能不全を誘発する可能性もあります。卵巣刺激の種類によっても使用できるトリガーは異なります。ロング法・ショート法はhCGトリガーが必須で、その他の刺激法はhCGでもGnRHaでも可能であることが多いです。
当院ではrhCG、uhCG、GnRHa、デュアルトリガー(hCGとGnRHaを同時使用)を症例によって使い分けていますが、「どれがいいですか?」と患者様に質問された場合、「rhCG、uhCG、GnRHaは出産までの差がありません。デュアルトリガーは通常のトリガーで回収率や成熟率が悪い場合に効果があると言われています。」とお伝えしています。
当院では2019年はPGT-Aを行っていません。しかし卵巣刺激が卵子にどのような影響を与えるかを調べる場合はPGT-Aを行い正常胚の割合や絶対数を参考にすることが多いです。

下記の論文はトリガーの種類により正常核型の種類が異なるかどうかを調べた論文です。当院で使用しているHMG量より多めに使用していますが、この論文を読むと38歳前後のBMIが高めの人には、当院のHMG使用量より少し多めに使用して採卵による回収卵数を増やしても良いのかなと思えた参考になる論文でした。

Euploidy rates between cycles triggered with gonadotropin-releasing hormone agonist and human chorionic gonadotropin.
Thorne Jら  Fertil Steril. 2019 Aug;112

PGT-Aを行った366名(total 539採卵)の患者を対象
アンタゴニスト法のトリガーをGnRHaの場合とhCGの場合との正常核型胚の割合を調査 卵巣刺激は3日目よりHMG製剤を使用し卵胞径が13-14mmに達するか、E2 >300pg/mlに達した段階からアンタゴニストを開始し17-18mmに到達した段階でトリガーを行い採卵を施行。PGT-Aを実施する基準は胚盤胞のガードナー分類で3BB以上。
刺激の量としては患者のBMIが高い分、少し多めにHMGを投与している印象(一日HMG量がおそらく300-450単位)。決してpeak E2は高い訳ではない。
GnRHaは平均年齢36.3歳、hCGは平均年齢38.6歳だが、3BB胚は回収卵あたり3.1-3.4個に1つの割合で決して生検を行う基準が厳しい訳ではない。
結果:年齢を補正するとトリガーをGnRHa・hCGに有意差なし。


治療周期あたりの患者特性(論文tableより一部改変)


PGT-Aあたりの正常核型胚の割合(論文tableより一部改変)

文責:川井(院長)