精液検査について

皆さんが受けられた精液検査の基準値って、どのように決められたものかは、生殖医療に深く関わっていないと理解されている方が少ないような気がします。
精液検査の基準値は「避妊をやめた後、12ヶ月以内にパートナーが妊娠できた男性を“妊孕性を有する男性”と定義したうえで、後方視的に検討されたもの」です。
(Cooper TG, et al. Hum Reprod Update. 2010. DOI: 10.1093/humupd/dmp048.)
つまり、最近の12ヶ月以内に妊娠できたカップルの男性の精液検査を5パーセントタイル(数字を小さいものから順に並べて小さい側から5%にあたる値)を基準値として定めているだけなので、①基準値内に入っていても妊娠に問題ないことを保証はしていませんし、②基準値以下でも生殖能力がないわけではないのです。

定めた精液所見に対しての下限基準値(5パーセントタイルと95%信頼区間)が以下のようになります。

パラメーター 下限基準値
精液量(mL) 1.5 (1.4-1.7)
総精子数(精液量中) 3,900 (3,300-4,600)
精子濃度(/mL) 1,500 (1,200-1,600)
総運動率(%) 40 (38-42)
前進運動率(%) 32 (31-34)
生存率(%) 58 (55-63)
精子正常形態(%) 4 (3-4)

サンプルを提供してくれた男性の年齢層は17~67歳で、12ヶ月以内にパートナーが妊娠できた父親の平均年齢(±SD)は31±5歳(範囲18-53)で、45歳以上は10名のみであり、高齢男性の妊孕性を意味するかどうかはわかっていません。
3大陸8カ国の5つの研究から得られた1,953個の精液サンプルのデータを組み合わせて分析していますが、日本のデータは入っておらず国内の妊孕性を有する男性の基準値と一致するかどうかも細かく言い始めるとわかりません。
ただし、アジアからは中国、シンガポールがエントリーされていますので国内でも十分通用する基準値だと考えています。

少ない分には「ステップアップしないと中々妊娠しませんよ」という説明をしますが、基準値を大きく上回っていたら妊娠しやすいかどうかはWHO基準では触れられていません。またWHO2010での精液検査の基準値前はWHO1999に精液検査の下限基準値が定められていましたが、精液量 2.0mL(現在 1.5mL)、精子濃度 2,000万(現在 1,500万)、総精子数 4,000万(現在 3,900万)、運動率 50%(現在 40%)と少し異なります。前回も10年ちょっとで更新されていますので2020年代に再度更新されるのでしょうか。男性不妊もDNA断片化検査や精漿の酸化ストレステストなど様々なエクストラ検査もでてきていますので、次の更新が楽しみです。

文責:川井清考(院長)

お子さんを望んで妊活をされているご夫婦のためのブログです。妊娠・タイミング法・人工授精・体外受精・顕微授精などに関して、当院の成績と論文を参考に掲載しています。内容が難しい部分もありますが、どうぞご容赦ください。

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