治療成績_妊娠率・流産率(2018.11~2019.10)

私が亀田IVFクリニック幕張の外来で連日患者様に接するようになり、ちょうど1年になります。勤務場所が変わるときは初めてお会いする患者様との信頼関係を構築するまでに時間を要し、一時的に転院を選択される患者様が増えることがありますが、今回の異動では、ほとんど転院されることなく患者様自身が当院で生殖治療を続けてくださったことにこの場を借りて御礼申し上げます。本年度は常勤医師の退職や異動があり、体外受精の患者様の殆どは私が担当させていただきました。

これからお示しするのは、現在の私たちが提供できる治療成績です。患者様が赤ちゃんを妊娠し家族として迎え入れられるよう、患者さまに応じて医師がオーダーメイドに治療方針を決定し、看護スタッフがケアし、胚培養士たちが卵子・精子を丁寧に取り扱った当院の通知表のようなものです。反省点も込め来年はよりよい成績を目指して参りたいと思います。結果として赤ちゃんを授かった方、当院では妊娠に至らなかった方、様々な方がいらっしゃると思いますので複雑な思いを拭い去れない感もありますが、現在通院中の患者様、このあと当院を不妊治療のパートナーとして選んでいただける患者様のために、示していきたいと思います。成績は、このあと亀田IVFクリニック幕張のホームページにも掲載されます。ホームページでは、あまり私の考えを書くことができませんのでブログで成績を解説しながら来年の当院の治療方針をお伝えできればと思っています。

当院の特徴は体外受精を見据えた患者様に対して手術の選択肢も提示する包括的な医療が提案できるところです。幕張でもMRI、CTは同一施設内に併設し卵巣・子宮の状態を評価がしやすい環境であること、そして鴨川本院での手術後の妊娠成績が安定しているため様々な治療方針を提示できます。妊娠成績も大事ですが、初心にもどり月経困難症など生活の質の改善まで考慮し、手術方針を決定してもらえる鴨川本院の生殖医療科のチームには感謝しかありません。

もう一つの大きな特徴は当院の成績管理システムです。カルテのデータを自動抽出しヨーロッパ生殖医学会が推奨する複数項目の指標をリアルタイムで管理しています。このシステムを導入したことにより当院の成績、提供する医療を患者様と共有しながら治療を進めることが可能となりました。当院を治療のパートナーとして選んでいただいた方には、1%でも良い結果に早く到達できるように取り組んで参りたいと思っています。

体外受精の成績に関しては、簡単に言うと39歳以下であれば移植あたり2回に1度妊娠する、40-43歳でも3回に1度妊娠する施設になりました。もちろん妊娠することができない患者様もいらっしゃるため環境を変えたほうがいいと判断した場合は転院を提案することもあります。目安は移植回数6回のうちには当院で提供できる一通りの治療は行えるように考え治療選択を行っておりますので、そこが一つの治療を見直すラインかと考えています。

1.妊娠率

私が赴任後1年の妊娠成績です。着床前スクリーニング(戻す受精卵が正常かどうか調べる検査)は実施しておりません。幕張に来院される患者様の妊娠に対する意識と理解度が高いこともありますが、亀田グループで生殖補助医療を始めてから一番の高水準の妊娠率を達成することができました。もともと高い水準の培養成績はありましたので、本年度は着床・移植部分の改善が寄与したと考えています。高い妊娠率を維持できた理由は凍結融解胚移植の割合を増やしたこと、胚盤胞移植を増やしたことの二点です。今までは結果が出ない方に対しては初期胚移植や複数胚移植を提案することありましたが、胚盤胞を戻す時期を決定するERA検査(http://www.kameda-ivf.jp/ja/checkup/006/index.html)を導入して以来、あえて初期胚を移植する機会が減少しました。

2.流産率

本年度は40-43歳の胚移植の臨床妊娠成績は35%を維持できましたが、やはり半分近い方が流産となっております。千葉市の近隣の産科施設の先生のご理解もあり当院では9週近くまでモニターをさせていただいておりますので、妊娠卒業前に流産するケースがほとんどです。来年度より、日本でも様々な施設で着床前スクリーニング検査が臨床研究として開始されます。流産を繰り返す方にとっては福音となりますが、受精卵の質を改善するものではありません。ERA検査で戻す時期を調整し染色体異常のない胚盤胞を移植しても妊娠率が80%弱であったと報告が2018年に出ております。妊娠しない・流産する原因は受精卵の染色体異常だけではないので、今後も一例一例オーダーメイドに評価しながら丁寧に取り組みたいと思います。女性年齢が35歳以降は1歳でも若い方が妊娠率も高く、流産率も低いことから患者様に対する体外受精治療を勧めるタイミングなども見直しを検討したいと思っています。

文責:川井(院長)