インフルエンザワクチンについて

今週から当院を受診中の患者様を対象にインフルエンザワクチンの接種を開始致しました。妊婦中にインフルエンザに感染すると重症化しやすく流早産の危険性などもあるため、流行時期に入る前にご夫婦でワクチンを接種して免疫をつけておくことを推奨しています。
日本総合内科専門医 日本家庭医療専門医・指導医 Certificate in Travel HealthTM (ISTM) 国際渡航医学認定医でもある亀田総合病院附属幕張クリニック 菅長 麗依(すがなが れい)先生にインフルエンザワクチンに関する記事をとてもわかりやすく書いていただきましたのでご紹介します。


Q1. インフルエンザワクチンは接種したほうが良い?どれくらい効果がある?

「インフルエンザワクチンを接種しても毎年インフルエンザにかかります」とおっしゃる患者さんは、毎年少なからずいらっしゃいます。果たしてインフルエンザワクチンを接種する意味はどれくらいあるのでしょうか。

ワクチンには「発病予防」と「重症化予防」、主に2つ目的があります。
これらをインフルエンザワクチンで説明すると、「インフルエンザにならないために予防する」目的と「インフルエンザにかかって肺炎・脳炎などの合併症、また死亡するのを予防する」目的、ということになります。

では、インフルエンザワクチンの予防効果はどれくらいでしょう?
毎年流行する型とインフルエンザワクチンの型の一致する度合いによって効果は異なるため、国や年によってその成績についてはばらつきがありますが、「発症予防効果」については概ね6割ほどといわれています。年齢によっても効果には差があり、特に65才以上の高齢者については、「発症予防効果」は3−4割と高くはありませんが、「重症化(特に死亡)予防効果」は8割と非常に高い報告が複数あります 1) 2)

インフルエンザワクチンの最も大きな効果は、「発症予防」というより、「重症化」を予防することです。インフルエンザワクチンを接種したのに、インフルエンザになった(発症した)としても、高熱で何日も苦しんで体調を大きく崩した、または、インフルエンザ肺炎になることが防げた、などということが、ワクチンを接種した効果と考えます。

特に妊婦は、インフルエンザにかかると重症化する対象に含まれるため、妊娠予定がある女性、または妊婦はワクチンを接種することが非常に重要です。

もう1点。インフルエンザワクチンは自分のためだけでなく、周りの人を守るためにも効果があるといわれています。皆がワクチンを接種すると、上記の発症予防効果はより高まることがわかっています(これを集団免疫といいます)3)。感染源の多くは家庭内または職場、学校などの集団生活の場です。みなでみなを守るため、インフルエンザワクチンは是非接種しましょう。

<集団免疫のイメージ図>

Q2. インフルエンザワクチンは妊娠中でも接種してよい?

インフルエンザワクチンは不活化ワクチンという種類のワクチンのため、妊娠中に接種しても全く問題ありません。一方、生ワクチンという種類のワクチン(例:風疹、麻疹、水痘、ムンプスなど)は妊娠中には接種できないため、妊娠前または産後(授乳中でも大丈夫)に接種する必要があります。

妊娠中のワクチン接種が心配な人は、妊娠前、または、自然流産の多い妊娠初期(妊娠14週頃まで)の間を避けて、ワクチン接種を行ってもよいです。妊娠中のインフルエンザワクチン接種は、お母さんの胎盤を通じて、お腹の赤ちゃんにインフルエンザの免疫抗体が移行し、赤ちゃん自身を守ってくれる効果も期待できます。
Q1でも述べたように、女性だけでなく、パートナーや同居家族もワクチンを接種し、家族みんなでお母さん(とお腹の中の赤ちゃん)を守ることが非常に大切です。

インフルエンザは毎年12-2月に流行するので、11月、遅くとも12月上旬までには接種しておきましょう。

Q3. 新型コロナウイルスとインフルエンザワクチンとの関係について

インフルエンザワクチンを接種すると、コロナウイルスにかかりにくくなるかもしれないという報告が出てきました 4)。これについてはまだ確定的な効果とは言えませんが、今後のさらなる報告に注目したいところです。 今年は夏にインフルエンザが流行する南半球の国でのインフルエンザ流行が全く見られなかった、という報告 5) から、日本でも今年の冬のインフルエンザはそれほど流行しない可能性は高いかもしれません。しかし、インフルエンザの流行には、人の移動も大きく関与するため、10月から緩和され始めた入国者の制限や国内での移動制限の影響が、この冬のインフルエンザ流行にどう影響がでるのか、引き続き注目していく必要があります。 発症初期の新型コロナウイルスとインフルエンザ、また風邪については、症状だけで区別するのはとても難しいです。加えて、今年は新型コロナウイルスを懸念して、インフルエンザの検査が簡単にはできなくなる医療機関も増えてくるかもしれません。
間違いなく言えることは、新型コロナウイルスの感染予防対策はインフルエンザの感染予防対策にもなります。日頃から手指衛生(石けん手洗いまたはアルコール消毒)とマスク、風邪予防に帰宅後などに水うがい(水道水で15秒程度×2-3回)などを続けること、そしてインフルエンザを予防するため、みなでワクチンを接種しましょう。

参考文献
1)医療関係者のためのワクチンガイドライン第3版 日本環境感染学会
http://www.kankyokansen.org/uploads/uploads/files/jsipc/vaccine-guideline%EF%BC%BF03.pdf
2)令和元年度 インフルエンザQ&A 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou01/qa.html
3)Seasonal influenza and vaccine herd effect Clin Exp Vaccine Res. 2014 Jul; 3(2): 128–132. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4083064/
4)Inactivated trivalent influenza vaccine is associated with lower mortality among Covid-19 patients in Brazil doi: https://doi.org/10.1101/2020.06.29.20142505
5)MMWR 2020;69:1305-1309.


菅長先生には インフルエンザに関するよくある質問 と プレコンセプションケア(妊娠を考えている方・不妊治療中の方のワクチン接種【妊娠する前に知っておこう VPD】)も監修して頂いています。 どうぞ参考になさってください。

文責:石川(事務長)

亀田IVFクリニック幕張