凍結融解胚移植の手技による妊娠予後因子は?(論文紹介)

胚移植は、卵巣刺激―採卵を行った後に受精卵を女性の体内に戻してあげる手技ですが、妊娠できる可能性をもつ、不妊治療においてはとてもキーとなる手技だと思っています。移植カテーテルに受精卵をローディングして、エコーガイド下で子宮内に戻す場所を決めて戻していきます。生殖医療に関わり体外受精を始めてから、私自身が一番試行錯誤しておりますし、指導も難しいところだと思っています。
これについて以前より分かりやすく発表し続けてくれているのが兵庫県の英ウィメンズクリニックです。論文をご紹介させていただきます。

Hayashi Nら.,Reprod Med Biol. 2020 DOI: 10.1002/rmb2.12322.

≪論文紹介≫

2017年8月から2018年1月までの神戸のクリニックで実施された単一凍結融解胚盤胞(Gardner grade ≥3BB)移植938例の胚移植周期を対象としました。臨床妊娠の予測因子として、子宮内膜厚、移植された際の気泡の位置、医師による自己評価スコア、ET時の子宮の方向を含むいくつかのパラメータの重要性を、単変量解析および多変量解析を用いて評価しています。
<結果>
ET 周期のうち、462 名(49.3%)が臨床妊娠に至りました。子宮内膜厚は臨床妊娠と直線的な正の相関を示しました。移植された気泡の位置と臨床妊娠率の間には曲線的な関係が見られました。臨床妊娠率は医師の移植に対する自己評価スコアが良好な症例ほど良好な結果になりましたが、子宮の向きは関係しませんでした。予測因子として、単変量解析では子宮内膜厚、医師による自己評価スコア、気泡の位置が臨床妊娠の有意な予測因子として同定されましたが、多変量解析では子宮内膜厚と気泡の位置は独立して臨床妊娠と関連している傾向にありました。

子宮内膜厚ですが、以前からの報告のように今回の論文でも8-15mmでは直線的に妊娠率が上昇しています。ただし、Sundstromらは、子宮内膜厚が4mm未満であったにもかかわらず体外受精で妊娠に成功したと報告していますし、本研究でも6mm未満の子宮内膜厚で2例(臨床妊娠率25%: 2/8)の妊娠が成立しています。
移植された気泡の位置は移植胚の位置の指標とされることが多く、体位を変えても気泡の位置が94.1%は変わらず妊娠した胚の81%が気泡の確認できた場所に着床すると報告されています。気泡の位置と関連するのですが移植カテーテルの置く場所も大事です。Coroleuらは移植カテーテルと子宮底部から1.5〜2.0cmの位置にカテーテルを配置した場合の方が、1.0cm未満に配置するより妊娠率が高いとしています。今回の論文でも気泡の位置が子宮底部から6-10mmまでは妊娠率は安定しており、10mm以降は低下しています。

≪私見≫

移植は本当に難しいです。私自身が、一番納得いく移植ができるまで苦しんだ手技なので、当院では移植を胚の移植カテーテルのローディングするところから子宮に戻すところまで全て、患者様にも画面を一緒に見ていただきながら行なっています。
今回の論文では「医師の移植に対する自己評価スコアが高いほど妊娠率が高くなった」とありましたが、多変量解析の結果では有意差がなくなっていました。やはり、何らかの因子が医者の移植に対する自己評価を下げるきっかけになっていて、他の交絡因子にかき消されたのかなと思っています。
今回の検討では筋腫等で子宮の変形している患者は除かれています。
実際に臨床を行っていると、子宮腔内が変形している方は沢山いますし、尿の溜まり方などによる移植直前の子宮のポジションなどでも状況が変わります。
当院では移植の当日は、来院時と移植直前の2回超音波検査を実施し、経腹エコーか経膣エコーかの選択を行い、また移植チューブも患者に合わせて4種類から選択しています。
これが良い方向に転んでいるかどうかは不明なのですが、結果として今の成績に落ち着いているので、今後も当面は現在のやり方で行っていく予定です。
余談ですが、英ウィメンズクリニックの塩谷理事長は、私が生殖医療を始めた頃から、何度も見学を受け入れご指導いただき、たくさんの感動を得て、そしてたくさんの知識を吸収させていただきました。最近では、私たちのクリニックにも培養士・医師ともに、多くの見学の方が来るようになってきました。私が、あの頃感じた生殖医療の感動を見学者に同じように伝えられるようになりたいなと切に感じます。

文責:川井(院長)

亀田IVFクリニック幕張