培養士の顕微授精のトレーニングはどのようにしているの?

今回は患者さんからよく頂く質問の1つ、顕微授精のトレーニングについてお話させて頂きます。

顕微授精のトレーニングを車の運転に例えて説明致します。

先ずは顕微授精に使用する機材を1枚目の写真でご覧ください。顕微授精では主に写真左側黄色い枠で囲った2つの機械(黄色い小さい枠で囲んだ機械はインジェクターと呼ばれ、顕微授精用の針の中に精子を吸ったり吐いたりするのに使用します。黄色い大きい枠で囲んだ機械はジョイスティックと呼ばれ、モニター内、卵子を吸い付けて動かないようにしている保持用の針を上下左右に動かすのに使用します)を左手で、写真右側白い枠で囲った2つの機械(白い小さい枠で囲んだインジェクター、白い大きい枠で囲んだジョイスティック、顕微鏡を中心に左右対称の配置となっております)を右手で操作します。顕微鏡を覗きながらの作業となります。この様子を2枚目の写真でご覧ください。

先ずはこの4つの機械を自由自在に動かせるようにトレーニングします。車の運転に例えると、ハンドル、ギア、アクセル、ブレーキを使って車を教習所内で走らせたり、止まらせたり、曲がらせたりを出来る様にするようなものです。当院では顕微授精の全工程を動画で記録しております。4つの機械をある程度自由自在に動かせるようになったら、次は臨床で行われた顕微授精の動画に照らし合わせて手を動かしてもらいます。ドライビングシミュレーターで車の運転の練習をするようなものです。この工程から学べることは計り知れません。卵子はパッと見、全て同じように見えますが、極端に言うと、10個あれば顕微授精に対する卵子の反応は10パターンあります。実際の臨床の動画に合わせて手を動かすことで、手が動きを覚えますし、また、視覚的にも手技を覚えることが出来ます。この工程を最低でも100回行います。これが終了したら、指導者が代表的な10パターンの顕微授精の動画に対して、手を動かしてもらい、質疑応答を行います。仮免許の実技と学科試験のようなものです。これに合格すると、いよいよ臨床参加です。路上教習のようなものです。路上教習では生徒の横に教官が隣にいて指導をするように、顕微授精においても指導者が術者の後ろに張り付いて、モニターを通じて卵子の反応と術者の挙動に絶えず注意を配ります。多くの施設で行われている顕微授精技術は車に例えるとマニュアルのようなものですが、当クリニックで行われている顕微授精技術はオートマのようなものなので、極端な話、術者は後ろに付いている指導者の言う通りに手を動かせば、問題なく顕微授精を行うことが出来ます。しかし、それでは術者は只の指導者の操り人形に過ぎず、1人で出来なければ何も意味はありません。最終的に指導者が口を出さなくても、自分の判断で問題なく顕微授精を行うことが出来る様になれば一人前です。運転免許交付のようなものです。最低でも30工程は必要になります。
最後に、この方法によりトレーニングした培養士の受精率を指導者のものと共にお示ししたいと思います。この方法によるトレーニングは教育期間が短いことが特徴で、こちらの成果は2018年に論文発表させて頂いております。

Piezo-ICSIがICSI未経験者エンブリオロジストのICSI後の臨床成績に及ぼす影響. 伊林他. 日本臨床エンブリオロジスト学会雑誌. 2018;20(1):1-8.

  指導者 トレーニングした培養士
顕微授精後の受精率 91% 87%

こちらの成績を見て頂くとお分かり頂けると思いますが、当クリニックの培養士は経験年数に関係なく、どの培養士が顕微授精を行っても、受精率は変わらないことがお分かり頂けると思います。

文責:平岡(培養室長)