円錐切除後の妊娠率や妊娠初期には影響を与えるの?(論文紹介)

昨日のブログでは産婦人科診療ガイドライン産科編2020の「円錐切除術後の妊娠はリスクが高いの?」(http://www.kameda-ivf.jp/blog/post_159.html)をとりあげましたが、妊娠率や妊娠初期への影響はどうなんでしょうか。私は円錐切除術で「子宮頸部がはっきりしない症例では妊娠率がおちるのではないか?」と思っていますが、論文で調べると妊娠率が低下する、しないについて意見が分かれて。今のところ、妊娠率に関しては低下しないという意見が優勢です。
子宮頸部上皮内癌や高度異形成に対する円錐切除術が妊娠率や妊娠初期にどのように影響を与えるかどうかを調査したシステマティックレビューおよびメタアナリシスをご紹介いたします。
Maria Kyrgiouら. BMJ. 2014 doi: 10.1136/bmj.g6192.

≪論文紹介≫

子宮頸部上皮内癌や高度異形成に対する治療歴のある女性と未治療の女性の妊娠率や妊娠初期の転帰を評価しています。MedlineやEmbaseを用いて文献検索し15件の研究が基準を満たしました。ランダム効果モデルを用いて相対リスクと95%信頼区間を検討しています。
メタアナリシスでは、円錐切除術が妊娠率に悪影響を及ぼすという証拠は得られませんでした。全体的な妊娠率は、治療を受けた女性の方が未治療の女性よりも高いという結果でした(4件の研究;43%:38%、相対リスク1.29、95%CI 1.02~1.64)が、研究間の不均一性は高く評価が困難でした。(P<0.0001)。
円錐切除術の有無により妊娠率に差がなく(2研究、88%:95%、0.93、0.80~1.08)、妊娠までの期間(12ヵ月以上かかる割合)にも差がありませんでした(3研究、15%:9%、1.45、0.89~2.37)。
妊娠期全体を通しての流産率(10研究、4.6%:2.8%、1.04、0.90~1.21)と妊娠13週までの流産率(4研究、9.8%:8.4%、1.16、0.80~1.69)には治療の有無により差がありませんでしたが、14-27週の流産率は円錐切除治療をおこなった女性の方が高い傾向にありました(8件の研究;1.6%:0.4%、16 558人の女性;2.60、1.45~4.67)。子宮外妊娠(1.6%:0.8%、1.89、1.50~2.39)と堕胎率(12.2%:7.4%、1.71、1.31~2.22)も円錐切除治療を受けた女性の方が高くなっていました。
結論:子宮頸部上皮内癌や高度異形成に対する円錐切除術が妊娠率に悪影響を及ぼすことを示唆する証拠はありませんが、14-27週の流産のリスクを有意に増加していました。

≪私見≫

円錐切除術が第二期の流産と早産のリスクの増加を説明する正確なメカニズムは不明とされています。ただ単に、円錐切除により頸部が短縮することによる物理的な支持の脆弱性によるかもしれません。ただ、そのほかにも①円錐切除後の子宮頸部の組織学的変化や二次的狭窄が影響を与えること、②膣内細菌叢から子宮内細菌叢への細菌移行に関する防御機構の破綻、そして二次的な免疫バランスの変化なども関係するのでは?と考えられます。
私が産婦人科医になった頃、「子宮内は無菌だ」と教わりました。それが、最近では子宮内細菌叢が着床や早産などとも関連するのではないかと臨床の現場で検査や治療が行われるようになっています。医療は年々進歩していきますね。
今後の報告にも注視しながら、円錐切除術を受けている患者様に対して、適切な情報提供を行えるよう務めたいと思います。

文責:川井(院長)