日本人における新しいFSH製剤の有効性と安全性を評価する無作為化第Ⅲ相試験の報告

ESHRE(ヨーロッパ生殖医学会)2020に採択された日本(埼玉医科大学の石原教授ら)からの報告を一例ご紹介させていただきます。
卵巣刺激に用いる自己注射可能な新しいFSH製剤が、既存の製剤と比べてAMHの高くない群では回収卵子数も低下せず、OHSSリスクも軽減し、臨床妊娠率も差がなかったという報告です。私たち亀田IVFクリニック幕張も今回の国内の治験(第Ⅲ相)に参加させていただきました。治験にご協力いただいた患者の皆さま誠にありがとうございました。商品化はまだされておりませんが、近いうちに患者様に選択可能な薬剤になるのでしょうか。楽しみに待ちたいと思います。

《報告内容のまとめ》

follitropin delta(REKOVELLE、Ferring Pharmaceuticals:今回の治験薬)をAMHと体重に基づいて個別に用量を設定し治験を行いました。このアプローチは、海外で実施された過去の臨床試験において、成功率を低下させることなく卵胞発育を最適化し、OHSSリスクを低減することが実証されているからです。今回の治験では20~40歳(平均34.1歳)の日本人女性347人を対象に無作為化、評価者盲検、対照試験が実施しました。AMH(15pmol/L未満、15pmol/L以上)で層別化し投与量を設定FSHアンタゴニストプロトコールで実施しました。エンドポイントは採卵による回収卵子数、OHSSの発生率、妊娠率としています。
follitropin delta(治験薬)はfollitropin betaと比較して卵子数の非劣性が確立されました。(9.3個 vs 10.5個)。AMH≧15 pmol/Lの患者(59.1%)では、治験薬投与群では、卵子数≧15個の患者(22.0% vs 42.0%)または卵子数≧20個の患者(8.0% vs 19.0%)が有意に減少しました(p<0.05)。
OHSSの発現率は,follitropin betaと比較して治験薬投与群では,いずれのグレードのOHSSでも11.2%対19.8%(p<0.05),中等度・重度のOHSSでは7.1%対14.1%(p<0.05)であり,OHSSの発現率は約半分にまで低下しました。胚盤胞移植は、治験薬投与群で79.4%、follitropin beta群で79.7%の患者に実施され、移植周期あたりの臨床妊娠率はそれぞれ31.9%、29.8%と差がありませんでした。
(O. Ishiharaら P-566 ESHRE 2020 Copenhagenより)

文責:川井(院長)