5日目胚盤胞も6日目胚盤胞もホルモン補充周期の同じ時期にもどしていいの?(論文紹介)

ホルモン補充周期凍結融解胚盤胞移植のタイミングがプロゲステロン投与後6日目(P+5)と7日目(P+6)で出生率に差があるかどうかを後方視的に調査した論文です。2015年12月~2017年12月の間にホルモン補充周期サイクル(HRT)で凍結融解胚移植(FET)を受けた患者に対して、プロゲステロン投与後6日目(P+5)に移植した患者をP+5群、7日目(P+6)に移植した患者をP+6群とし出生率を比較しました。HRTの方法は単一施設の報告ですのである程度は統一されています。
P+5群346人、P+6群273人とで比較すると、出生率は様々な交絡因子で補正したあとでも36.6%とほぼ同等でした。しかし、サブグループ分析では、P+5に移植された6日目胚盤胞の流産率が、P+6に移植された6日目胚盤胞の流産率と比較して有意に高いことが明らかになりました(50.0%対21.4%)。さらにP+6に6 日目胚盤胞を移植すると、高い出生率となる傾向がありました(P+5群:21.5%、P+6群: 35.5%)。結論としてHRTサイクルにおける6日目胚盤胞にはP+6胚移植が出生率も高く流産率も低い傾向があるとしています。
彼らはHRTプロトコルの利点としては、スケジュールの立てやすさと再現性の良さを記載しています。着床の窓の幅は人によってまちまちで、プロゲステロン投与開始から約48時間後に開始され、少なくとも4日間持続するとされていますが、至適な凍結融解胚移植の時期はHRTや胚の状態により固定のやりかたではなく柔軟に対応すべきでは?としています。今後、大規模な前向き研究の必要性が他のグループからの報告が必要であるとしています。
Roelens Cら. Fertil Steril. 2020. PMID: 32553469

  Day 5 胚盤胞 Day 6 胚盤胞
  P+5
(n = 252)
P+6
(n = 211)
p P+5
(n = 94)
P+6
(n = 62)
p
生化学妊娠率 (hCG(+)/FET) 63.9% (161/252) 55.0% (116/211) .05 46.8% (44/94) 50.0% (31/62) .70
生化学流産率
(GS未確認/hCG(+))
8.7% (14/161) 11.2% (13/116) .49 4.5% (2/44) 9.7% (3/31) .35
臨床妊娠率 (GS確認/FET) 58.3% (147/252) 48.8% (103/211) .38 44.7% (42/94) 45.2% (28/62) .95
流産率  (流産/GS確認) 22.4% (33/147) 21.4% (22/103) .23 50.0% (21/42) 21.4% (6/28) .02
生産率 (生産/FET) 42.5% (102/240) 36.9% (76/206) .23 21.5% (20/93) 35.5% (22/62) .05

私見

この論文は、ERA(着床の窓)検査を数多く行なっている私たちにとって、自分たちの医療を再評価するとても良い論文だと思っています。ERA検査では今までプロゲステロン投与後120時間(P+5)に胚盤胞移植をすることをスタンダードとして内膜のずれを見ていくことが推奨されていて、内膜のずれが起こっている人を事前にみつけるリスク因子は、反復して着床不全を起こすこと以外は見つかっていません。今回のことから、『もしかすると6日目胚盤胞がたくさんできる患者様は内膜もずれている可能性があるのかもしれない』と私たち自身の臨床成績も振り返る必要があると考えています。
患者様から「5日目胚盤胞も6日目胚盤胞も戻す時期は一緒でいいんですか?」と質問があった場合、「一般的には同じステージの胚盤胞は同じタイミングで戻します」と説明してきましたが、6日目胚盤胞移植の妊娠成績が5日目と比べて悪いのは胚の質であることは、間違いない事実ですが、胚移植時間(受精卵の発育スピードと内膜の着床能を同調させること)も柔軟に検討していくことが必要なのかもしれません。
この論文の筆者たちも記載していますが、もちろん、day5、6胚盤胞はもともと胚の質自体も異なりますし、この論文の症例では二個移植をする患者の割合もP+5群、P+6群で異なっています。他のグループからの追跡研究や大規模な前向き研究が必要であると思います。
この論文を通して、私たちの臨床現場にすぐに応用しようとは考えておりませんが、6日目胚盤胞が数多く凍結できた患者様が胚移植で良好な結果にならなかった場合、ERA検査などを早期に考慮してもよいのかもしれません。

文責:川井(院長)