千葉市不育症検査費助成事業について

千葉市では2020年度から不育症検査費助成事業として、一定の条件をみたす患者様の中で、上限はありますが、自費でかかる検査金額の50%を負担してくれるようになりました。流産をくりかえす患者様が対象となります。2回以上の流産既往が対象とりますが、ご自身があてはまるかどうかは千葉市の保健福祉センターなどにお問い合わせいただければ幸いです。 助成の対象となる検査項目は以下の表をご覧ください。
私たち亀田メディカルセンター幕張ではMRIを含めて完備しており、全ての検査が実施可能です。また、不育症の治療を行う際にもそれぞれの分野の専門医が在籍しております。
検査をおこなう意義・目的は、原因を同定し、次に起こりうる流産の頻度を予測し、治療可能であれば介入することにより流産率を減らすことです。
「原因が治療可能であれば介入する」とはどのようなことでしょうか。
①抗リン脂質抗体 ②凝固因子検査 に異常があった場合は妊娠中も含めて低用量アスピリン(内服)やヘパリン(連日注射)を行います。
③内分泌検査は甲状腺機能異常があった場合は妊娠中も含めてレボチロキシンナトリウム(内服)を行います。こちらは当院に不妊症で通院されている患者様は初期にスクリーニングとしておこなっております。当院では亀田総合病院附属幕張クリニックに在籍する内分泌専門医の外来を併診していただきます。
④子宮奇形は治療選択肢として手術という方法もありますが、現在手術まで実施する患者様はそこまで多くおりません。また正確な数はあらためて調べてみますが、ほとんどの子宮奇形は手術なしで妊娠し卒業されていらっしゃいます。私たちは子宮奇形を疑う場合、3D超音波検査でまずはスクリーニングをおこない、子宮卵管造影検査(HSG)、子宮鏡検査、ソノヒステログラフィー、MRIを実施しております。手術の適応があるかどうかは判断が難しいため、生殖医療専門医と腹腔鏡専門医資格をもっており、当院で手術相談外来をおこなっている、亀田総合病院 生殖医療科 林医師、東京医科歯科大学 産婦人科 石川医師と複数の医師でカンファレンスをおこなったうえ、治療提供をおこなっています。
⑤夫婦染色体検査、流産胎児の絨毛染色体検査ともに当院で実施しております。夫婦染色体検査を行う前には十分な説明が必要となります。臨床遺伝専門医の田島先生、石川先生の遺伝カウンセリングをうけていただき、そのうえで検査をおこないます。中には体外受精をおこなうことにより流産する受精卵をもどさない治療選択も可能です。当院は2020年3月 日本産科婦人科学会の着床前診断の認可を取得しておりますので、そちらもふまえた治療選択をご提示させていただくことが可能です。

今回の助成金は千葉市独自のものですが、対象外の方にも、これを機に不育症に関して周知していきたいと思っています。不妊症以上にエビデンスが乏しい分野であり、原因が特定できない状態で無作為に治療だけ行われている現状があります。私自身、色々な文献や本を読んでも、すっと頭に入ってこず、恥ずかしながら、なぜここまで理解できないのかを確認するために日本のガイドラインなどを作っている名古屋市立大学の杉浦教授のところまで直接何度か質問にうかがった経緯があります。
少なくとも日本のガイドラインに記載されていること、そして当院の成績に関しては皆さんに共有することが可能ですので、複数回にわたりますがブログに準備させていただきたいと思います。

不育症検査費助成事業の対象となる検査項目について

項目
①抗リン脂質抗体 抗カルジオリピンβ2グルコプロテインⅠ(CLβ2GPⅠ)複合体抗体
抗カルジオリピンIgG抗体
抗カルジオリピンIgM抗体
ループスアンチコアグラント
抗PE IgG抗体(抗フォスファチジルエタノールアミン抗体)
抗PE IgM抗体(抗フォスファチジルエタノールアミン抗体)
②凝固因子検査 第XⅡ因子活性
プロテインS活性または抗原
プロテインC活性または抗原
APTT(活性化部分トロンボプラスチン時間)
③内分泌検査
(甲状腺機能)
TSH
fT4値
TPO抗体
④子宮形態検査 子宮卵管造影検査(HSG)
ソノヒステログラフィー
MRI検査
子宮鏡
⑤夫婦染色体検査、流産胎児の絨毛染色体検査

文責:川井(院長)